Top >>不動産での相続税対策 >> 相当の地代方式は
地代を固定し借地権を移転…相当の地代方式で相続税対策!
|
土地と借地権
1億円で評価される土地があります。その上に、所有者の同族法人が建物を建築して、「借地権」を設定します。法人が土地を賃借するわけですが、権利金の授受はありません。
〈1億円の土地で権利金の授受が無い〉場合…国は、《土地評価の6%》である600万円を、《世間相場地代》と定めます。これに従い、「地代」を600万円で固定します。
地代を固定することで〈利用制限あり〉とされ、土地の評価は、20%減になります。しかし、税務においては「借地権」は発生しないとされなす。
借地権の対価の授受があったり、借地権設定で法人に贈与すれば、ここで借地権は移動しますが、個人の譲渡所得や法人の受贈益としての法人税課税を考えると現実的ではありません。
地代と借地権
「借地権」は、《土地を安く借り続ける権利》と、考えられます。《世間相場の地代》を払う法人に、『土地を安く借り続ける権利(=借地権)』は、ありません。
さて…土地が値上がりして、3倍の3億円になりました。《世間相場の地代》も、《土地評価の6%》である1,800万円に、自動的に値上がりします。
しかし、地代は固定なので、600万円のままです。法人は、《世間相場の地代》ではなく、《安い地代》で借り続けるわけです。つまり、この法人に、《土地を安く借り続ける権利》である「借地権」が発生したということです。
言いかえれば「借地権」とは《土地を安く借り続ける権利》なのです。
借地権の移転
法人が借りている土地(底地)の評価が、1億円から3億円に上がるまでには、数年かかったとしましょう。
3億円に値上がりするまでの間、土地の評価は1億円のままで固定されます。その間に値上がりした分は、全て法人が所有する「借地権」の分になります。法人の『借地権割合』が、土地の値上がりに比例して増えていくわけです。
土地の評価が3倍の3億円(ターニングポイント)に達すると、「借地権」が、完全に法人に移ります。《ターニングポイント》以降、「借地権」を有した法人の『借地権割合』は、一般の借地人と同様になります。(借地権の移転については一定の計算方法があります。)
借地権と相続税対策
土地の価格が上昇している間、土地の評価は固定されているため、土地の所有者の「相続税」は増えません。値上がりした分は、全てが「借地権」として、《法人の財産》になるのです。「借地権」は、最終的には完全に法人に移ります。
土地の所有者は、土地の価格が上昇しても「借地権」を発生させずに移転できました。「地代」を当初の『世間相場』で固定することで、「相続税」を増やさずに済んだのです。
このような相続税対策は、『相当の地代方式』と呼ばれています。
複雑な算式
《借地権の移転》については、国税庁の通達により、算式が定められています。ここでは、一般地代水準(世間相場地代)を、貸宅地評価額×6%と仮定しました。すると、《3倍3億円》である「ターニングポイント」は、土地の『借地権割合』で決まります。
「ターニングポイント」は、『借地権割合』が50%なら「2倍2億円」、同様に…60%なら「2.5倍2.5億円」、70%なら「3.3倍3.3億円」、80%なら「5倍5億円」です。
計算過程には、《その年の路線価》だけはでなく、『過去3年平均』がでてきます。したがって、実際のターニングポイント到達には、時差が生じるのです。
蘇える相続税対策
『相当の地代方式』は…《土地神話時代》の昭和期に、相続税対策の王道でした。そして、《地価下落時代》に姿を消してからは、忘れられていました。しかし、底値を打ったとして、地価上昇を考えるのならば復活をします。
「路線価」は、1月1日に改訂されます。実勢地価の後を追って、上昇するのです。バブル期に、ある土地の「路線価」は、2年で4倍になりました。この手法で、「借地権」を一気に法人に移せます。
新たに建物を建築しなくても、被相続人が所有している建物のみ法人に売却することも、出発点になります。地価の推移を見て、やる・やらないの決断をしないといけませんが、もしこのような相続税対策をやるのであれば、より早く実行するのが良いでしょう。
所得税の垂れ流し
この手法は…借地によって受取る地代が高額であるため、所得税と住民税の負担が増大するのが、欠点といえるでしょう。
土地が10億円の場合、《世間相場地代》は、6%で6,000万円です。固定資産税のみが経費だとして、所得税と住民税の合計税率は、最高税率の50%になります。
昭和期の合計最高税率は、88%でした。それでも、この手法を実行する人はいましたが…。
また、土地の評価額が値上がりしなければ、「借地権」が移る効果はありません。多額の所得税と住民税を払うだけ‥になってしまします。