担保不動産への相続税…売却&弁済免除で保証債務を履行する…担保不動産の相続税対策!

 

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売却&弁済免除で保証債務を履行する…担保不動産の相続税対策!


個人は債務控除

評価額が5億円の土地建物を所有する人が、この不動産を担保にして、銀行から5億円の事業資金を借入れました。ここでこの人が死亡した場合の、「相続税」は…事業経営が、個人か法人かによって、異なります。

事業が個人経営なら、個人の借金ですね。この人にとっては、『資産』が不動産の5億円、『債務』が銀行借入金の5億円…差し引きゼロですね。

法人は担保提供

では、事業が法人経営ならば…この人の『資産』が不動産5億円であることは、同じです。しかし、《借入金5億円》は、個人でなく会社の借金です。したがって、個人の『債務』として控除することはできないのです。

つまり、この人にとっては、差し引きゼロではなく《プラス5億円》です。単に、〈所有する不動産を担保に提供しただけ〉‥と、考えます。

さて、会社の経営が順調で、5億円の借入金が無事に弁済されれば良いのですが…経営難で《債務超過》になったら‥さらに、「相続」が起きたら‥‥どうなるのでしょう。

担保提供は保証債務

担保提供しただけ(物上保証)の場合は、『保証債務』になります。

「相続税」における『保証債務』の扱いについては

‥‥〈保証債務については、(相続税計算上での債務として)控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務者の債務として控除すること。〉‥‥と、通達で定められています。

控除不可?

《主たる債務者》である会社が…単なる赤字や債務超過の状態では、『保証債務』の控除はできません。会社が弁済不能の状態に陥って、《担保提供者》が《保証人》となって弁済せざるを得ない場合に、控除できるのです。事実、債務超過の会社は多々存在し、多くが返済を続けています。

『債務』としての控除は

‥‥〈一般に主債務者が破産、和議、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受け、又は事業閉鎖、行方不明、刑の執行等により債務超過の状態が相当期間継続しながら、他からの融資を受ける見込みもなく、再起の目途が立たないなどの事情により事実上債権の回収ができない状況にあることが客観的に認められるか否か〉‥‥

という程度で、認められます。(名古屋地裁平成10.11.11.判決)

破産で可!

まるで、〈死亡する前に会社を破産させれば控除できる〉‥と言わんばかりに、厳しい条件ですね。しかし、《破産》せずに踏み留まれば、「相続税」が余計に課されるわけです。

また、会社の経営状態は死亡時の状況で判断されるため、《破産》が死亡後であっても控除される‥とは言い切れません。「相続税」は、〈借入金を返済できない会社が事業継続すると大変だゾ〜〉‥と、警告しているようです。

《担保提供者》にしてみれば、借入金は、《保証人》となる可能性がある『債務』です。しかし、「相続税」の計算上は控除ができないのです。

売却弁済免除で相続税対策

この人の場合…〈担保である不動産を売却して銀行に返済する〉ことが、相続税対策になります。

《担保提供者》が自ら《保証人》となって、銀行に5億円を返済してしまうのです。返済をすると、《担保提供者》には、会社に対する『貸付金(求償債権)』が発生します。このままでは…返済の目途がない『貸付金』である5億円が、個人の財産として、「相続税」の課税対象になってしまいます。ですから、〈売却して返済するだけ〉では、ダメなのです。

そこで、『貸付金』を、免除します。これで、《差し引きゼロ》です。

贈与で相続税対策

『貸付金』の免除を受けた会社には、債務免除益の課税が発生します。会社を清算することも、視野に入れる必要があるでしょう。

また、担保である不動産を、会社に贈与すると…《売却弁済免除》と同様の効果が得られる場合もあります。

担保の売却や法人への贈与に際しては、「譲渡税」が課されます。しかし、〈保証債務履行のための譲渡は非課税になる〉‥といった特例もあるわけです。この特例を使えるように、対策を練ることも必要ですね。
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