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汚染の判明時期で相続税評価額に差?…土壌汚染地の浄化義務!
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浄化義務
「健康」や「環境」が、現代のキーワードになっています。マンション用地や住宅用地では、『土壌汚染』が、極めて重大な問題です。《土壌汚染住宅》などと言われたら、一巻の終わり…デベロッパーも、戦々恐々です。
2003年2月、土地汚染対策法が施行され…土地所有者は、土地の調査や浄化義務を負うことになりました。義務ですから、浄化の費用は汚染原因者に請求できます。しかし、回収できるかは別です。
危険の判断
土地の用途が、直前まで化学工場やクリーニング店などであれば、注意もするでしょう。しかし…直前に問題がなくとも、数十年前に化学工場だった‥ということがあります。過去の汚染は、残っています。そこで、昔の住宅地図や戦前の航空写真で確認する‥といった、履歴調査が必須なのです。
農地や山林であったところが、現状は普通の住宅敷地になっている場合でも、問題になることがあります。宅地造成に使用された《土》は、正体不明です。汚染された土が運び込まれていれば、『土壌汚染』です。所有者に罪はありませんが…。
『土壌汚染』は、様々に存在します。そして、浄化費用が土地の価格を超える場合もあるのです。
汚染の評価
国税庁は、「土壌汚染地」についての相続税評価額の考え方を、情報として公表しています(2004年7月5日付)。
この情報の冒頭に…
〈土壌汚染対策法の施行により、土壌汚染地であることが判明し、相続税等の課税上問題となる事例の発生が考えられることから、土壌汚染地の評価方法の基本的な考え方を取りまとめる〉‥とあります。
また、「土壌汚染地」として評価される土地は…〈課税時期において、評価対象地の土壌汚染の状況が判明している土地〉であり、〈土壌汚染の可能性があるなど潜在的な段階では土壌汚染地として評価することはできない〉‥と、明言されています。
判明の時期
8,000万円の費用をかけて浄化すれば、1億円の価値がある「土壌汚染地」…単純に計算すると、この土地の価値は2,000万円です。これは、『土壌汚染』の状況が、「相続税」の課税時期(被相続人の死亡時)に判明していることが前提です。
一方、課税時期には不明であり、その後「土壌汚染地」であることが判明した場合…この土地の価値は1億円として、「相続税」が課税されるでしょう。このように、「相続税」の課税時期によって、評価に差があるわけです。
『土壌汚染』が心配な土地や、相続税納税のため売却予定の土地がある場合、「相続税」の扱いを充分に認識しましょう。そして…〈事前に調査するか、放置するのか、浄化工事はするのか〉‥など、決断をするのです。
汚染地の評価
「土壌汚染地」の評価方法には、〈原価方式・比較方式・収益還元方式〉があります。しかし、実用可能であるのは、『原価方式』だけのようです。
『原価方式』は、以下の算式によって計算されます。
「土壌汚染地の評価額」=「汚染がない場合の評価額」−「浄化費用」−「使用収益制限減価」−「心理的要因の減価」
「浄化費用」については、環境省が指定する、指定調査機関の工事費見積もりで計算するしかないようです。
請求権の課税
汚染の原因が相続人には無く、他に原因者がいる場合は複雑です。原因者を特定できた場合、かかった『浄化費用』を、その原因者に請求することになります。
すると、その『浄化費用』は…原因者への請求権として相続財産になり、「相続税」がかかります。
その原因者が破産状態等で回収不能ならば、『浄化費用』を計上する必要はありません。しかし、回収不能でないならば、『浄化費用』の請求権は「相続税」の課税対象なのです。