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自宅の相続と売却…居住用財産の特例適用で譲渡税軽減!
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マイホーム売却は…
親が死亡した後に自宅を売却する予定がある場合、「相続税」のみならず、「譲渡税」にも注意が必要です。
昭和50年まで両親と同居していたAさんは、転勤で他県に引っ越します。自宅の土地建物は父親の所有でしたが、その父親は、昭和54年に死亡します。Aさんが土地建物を相続して、母親がそこに住み続けます。
平成7年、土地建物を5,200万円で売却します。ここでは、売却額5,200万円から取得費と譲渡費用を差し引いた金額…譲渡益は、4,000万円とします。
譲渡税が優遇
《居住用財産の譲渡》の場合には、《特例》で3,000万円の特別控除があります。譲渡益の4,000万円から3,000万円を控除して、課税対象は1,000万円です。税率も《特例》で、所得税・住民税の合計14%…譲渡税額は140万円です。
《居住用財産の譲渡》でなければ、4,000万円から一般長期譲渡の特別控除100万円を控除するだけです。課税対象は3,900万円で税率は26%、税額は1,014万円です。差額は、874万円にもなります。
Aさんは、〈居住用財産の譲渡である〉‥と、税務署に申告します。しかし税務署は、否認します。Aさんは税務署と争って、国税不服審判所で戦うことになります。
住んで居たのに…
Aさんは…〈自宅には生計が一である両親と居住し、生計一には居住用特例適用の例外があるはず〉‥と、主張します。税務署は…〈例外について居住のみは不可、所有者として居住しなければ居住用特例は適用しない〉‥と、応戦します。
昭和50年まで居住していた時、Aさんは、所有者ではありません。昭和54年の父の相続によって初めて所有者になりましたが、所有者となってからは居住していません。所有者として居住した事実が、無いのです。
土地建物を相続したのがAさんではなく母親であれば、居住用特例を適用できたのです。国税不服審判所の戦いは…税務署の勝利に終わりました。(平成10年12月22日、国税不服審判所・裁決)
売却して分割
自宅土地建物を所有する父親と長女が同居して、長男は、家を出ていました。父親が死亡したので、土地建物を売却して、売却金を長男・長女で分けます。
まず、考えるのは…土地建物を共有で相続登記して、一緒に売却することです。長女の売却持分には、居住用特例が使えます。長女は、父親の死亡後も、短期間であれ《所有者として居住》していました。しかし、《所有者として居住》したことがない長男は、特例を使えないのです。
この場合は、〈長女が土地建物を全て相続して売却後、長男に分配金を支払う〉‥という、『代償分割』にするのが正解です。〈長女は土地建物を相続する。長女は長男に幾らを支払う。〉‥といった、「遺産分割協議書」を作成するのです。
所有&居住
父親が《独居老人》であった場合…生前に、父親自らが売却すれば、父親が居住用特例を使えます。しかし、父親の死亡後に土地建物を相続した相続人が売却する場合…その相続人が、相続後そこに居住しなければ、特例を使えません。死亡した父親が、いかに長くそこに居住していても…。
また、居住を止めた3年目の年末までであれば、特例は適用できます。先のAさんが主張した…単身赴任等で自宅に残した家族と生計一である場合‥なども、適用できます。
ただし、すべて《所有者として居住》していたことが前提です。住まなくなった後で相続により取得した《元自宅》は、適用外なのです。
平成10年12月22日裁決
請求人は、本件譲渡資産については、[1]昭和48年に父F所有の甲建物を増築し、当該増築部分を請求人所有の乙建物として登記して、以後これらの建物を一体として居住の用に供しており、また、事実上父母の生活費を負担していたこと、[2]その後、請求人は転勤のため昭和50年以降本件建物に居住できなくなったが、生計を一にしていた父Fは死亡時まで、母Gは本件譲渡時まで本件建物に引き続き居住しており、請求人とその親族は本件譲渡資産を一体として居住の用に供していたのであるから、措置法第31条の3第1項及び第35条第1項の規定による課税の特例を適用すべきである旨主張する。
ところで、居住の用に供していた家屋の敷地である土地については、家屋の所有者と土地の所有者は同一人であることを前提として、居住用財産の課税の特例は規定されているものと解され、また、「居住の用に供されていた家屋等」であっても、居住しなくなった後の一定期間内の譲渡であれば、本件の特例が適用されるのであるが、その要件の解釈に当たっては、いずれも所有者として家屋等を所有している期間において居住の用に供していたことを要するものと解されており、かつて居住の用に供していた家屋等を居住の用に供しなくなった後、当該家屋等を相続により取得して譲渡した場合には、本件の特例の対象となる居住用財産には当たらないと解すべきである。
また、乙建物は、請求人が居住の用に供しなくなった後も、請求人が生活費を負担していたGが譲渡時まで引き続き居住していたことから、居住用財産に該当すると認められるとしても、[1]本件譲渡に係る売買契約書には、本件宅地の公簿面積と建築確認対象面積とに差があった場合には、売買代金の額を本件宅地の面積で除した金額に相当する金額の割合により売買代金を清算する旨の特約が付されていること及び[2]本件建物は買主において取得後すぐに取り壊されていること等からみて、本件譲渡資産の譲渡対価は、すべて居住用財産には該当しない本件宅地の対価であると認めることが相当である。
したがって、本件譲渡資産の譲渡所得金額について本件特例を適用することはできない。